昔、むかしの郡山城の城下町であったおはなしです。

柳二丁目に
寺戸屋(てらどや)
という帽子屋がありました。

ある寒い、さむい夜のことでした。
店を閉めたというのに表戸を、
トントントン。
たたく音がしました。

「おや、こんな時分に誰だろう。」
不思議に思いながら主人は木戸をあけて出てみます。
すると冷たい風がふく中、一人の婦人が立っていました。

婦人は震える声で、
「夜分、すいません。寒がる子供たちのために、綿帽子を三つ、わけてくださいませんか。」
「それはそれは、気の毒なことに・・・」
いうとおりに主人は店の奥から綿帽子をとり、婦人に渡しました。

婦人はニッコリと笑って、何度もお礼をいいました。
「代金は、源九郎神社へ取りにきてくださいね。」
といって婦人は帰っていきました。

後日、婦人のいったとおりに主人は、源九郎神社へ代金をとりたてに訪れました。

しかし、どうしたことか神社の宮司は、
「そんな婦人はいない。綿帽子も買ってはいないし、まったく覚えのないのないことだ」
と突っぱねます。

宮司と話がかみあわず、はてと主人は首をかしげます。
主人と宮司が話していると、境内の隅の柱の陰から仔狐が、ひょっこり、
一匹、
二匹、
三匹
と順番に顔をのぞかせました。

その仔狐たちは、なんと、あの綿帽子を被っているではありませんか。

主人と宮司は、顔をみあわせます。
すっかり得心して主人は、
「源九郎狐さんのなすことよ。いたしかたなし。いたしかたなし。」
と頭をペシっと叩いて、カラカラと笑いました。

そうして代金をとらず、そそくさと神社を後にしたのでした。